大元昆布海産株式会社
設立:昭和39年
福島県いわき市四倉町字芳ノ沢153
0246-66-1070
代表取締役:新妻正啓
事業内容:海藻加工業
仮設工場から新たな一歩。地元できざみ昆布を製造
------津波で工場が全壊流出------
福島県いわき市久之浜町。東日本大震災では、津波と直後に発生した火災で、被害が大きかった地域のひとつです。

きざみ昆布を主力として製造する大元昆布海産株式会社(新妻正啓代表取締役社長)。久之浜町の海岸沿い、海からわずか数十メートルのところで操業していました。震災当日、激しい揺れが工場を襲い、しばらくして津波の第一波が到達します。膝くらいほどの浸水に新妻社長は「こういうものか」と思い、大きな津波が来るなど想像しなかったと言います。第二波はおよそ5分後。新妻社長が工場内を確認し、建物の外に出た時、二階建ての作業場の屋根の上に波が見えました。「7、8メートルはあったと思う」。新妻社長は津波に流され、工場の中の重量物につかまり九死に一生を得ました。「終わりかと思った。外に流されていたら、引き潮でやられた」。

工場は全壊流出。いつ再開できるかわからず、一時従業員全員を解雇せざるを得ませんでした。
(写真:新妻正啓代表取締役)
------ここで終わるわけにはいかない------
「いつまでも待ってはいられない」。
新妻社長は常に、事業再開を考えていました。「やらなきゃ倒産。終わっていいのか。社歴もある。自分の使命。なんとかしたい」。
取引先から言われた「再開したらまたお願いしたい」」という声が力になりました。資金問題は県の融資を活用。中小企業基盤整備機構が、いわき市四倉町の四倉中核工業団地内に仮設施設を建築することを知り、応募。工場の規模は以前の1000平米から400平米に縮小しましたが、震災前勤めていた従業員に声をかけると、快く社長のもとに戻ってきてくれました。
震災から8カ月以上経過した11月、大元昆布海産は復活しました。
------原点に立ち返る------
「従業員は宝です」。誇らしげに話す新妻社長。「従業員の笑い声を聞くと、うれしかった。やって良かったと思った」。言葉をかみしめるように話します。
30人いた従業員は社長を含め8人に。北海道産昆布を原料とするきざみ昆布を、1日2500パックほど生産しています。生産量は震災前の3分の1に減少しました。今後の課題は売り先の確保。「今年1年は我慢の年」と話します。見通しをつけて商品を増やしながら、目標は3年後くらいに震災前の3分の2に戻すこと。

津波により一瞬で会社をなくし、原発事故という追いうちは足かせとなりました。震災後は、原点に立ち返り、何を会社のためにすればよいか、何を従業員のためにすればよいか価値観を整理したと言います。

「地元の人にはお世話になってきました。地元に戻って地元の人を雇用したい」「頑張っている姿をみせなくてはいけない」。新妻社長の言葉には、ゆるぎない決意が感じられました。


平成24年1月取材