株式会社 貴千
創業:昭和38年
本社:福島県いわき市洋向台1-8-15
問い合わせ先:福島県いわき市永崎字川畑25
0246-55-7005
代表取締役:小松縣二
事業内容:かまぼこ製造

HP http://www.komatsuya3rd.com/
地元愛が生んだ小名浜の味へのこだわり
------シフトを変え、差別化を図ることができる商品へ------
福島県いわき市。蒲鉾を生産する工場が沿岸に立ち並び、「板かまの生産日本一」と言われた場所です。平成23年3月11日。発生した東日本大震災の津波は福島県沿岸を襲い、蒲鉾工場は大きな打撃を受けました。工場の数は半分に減ったといわれています。

いわき市永崎で蒲鉾を生産する、株式会社貴千(小松縣二代表取締役)も地震の被害に遭いました。津波は到達したものの、工場内には浸水せず機械が壊れなかったのが唯一の救いでした。しかし割れた床を改修しなければならず、また震災1カ月後に発生した大きな余震で断水は長引き、工場が再開できたのは震災から1カ月以上経った4月27日のことでした。

震災と福島第一原子力発電所の事故の影響で、「売り上げは震災前の7割から8割程度に落ち込んだ」と小松唯稔専務は話します。それまで主力としていた「板蒲鉾」は、他社と差別化を図りにくく利益率の少ない商品。震災後は「ギフト・詰め合わせ」にシフトを変えました。


(写真左:小松唯稔専務取締役 右:企画開発室 高木市之助さん)

------小名浜の商品で小名浜の復興を目指す------
貴千は震災後、板蒲鉾の売り上げは減少しましたが、ギフト商品の売り上げは対前年比200%を超えています。蒲鉾は主原料が外国産のすり身。原発事故の影響で、海産物に不安を抱える人が多い中、外国産が主原料の蒲鉾は「安心して食べることができる」食材として消費者の支持を得ています。また、震災後、郷土に対する想いを強くする人が増え、ギフト商品を買う地元の人の割合が増えました。
「蒲鉾を通して小名浜を活性化させたい」そう語る小松専務。学生時代福島県を離れ、あらためて福島県の良さ、地元小名浜地区の良さを感じることができた経験は、地元愛・小名浜愛を強くしました。「小名浜の商品が世に出る事で復興につなげたい」。小松専務を中心に、若い世代が中心となって、復興につなげる新しい商品開発が始まりました。
------小名浜漁師料理「さんまのぽーぽー焼き」------
新商品「さんまのぽーぽー焼風蒲鉾」。パッケージには「いわき小名浜漁師料理」と記載されています。「いわき小名浜」と記載したことにより、風評被害が心配だったそうですが、いざ売り出してみると地元で大ヒット。売れ筋のひとつとなります。

「さんまのぽーぽー焼き」は、小名浜では馴染の味。サンマを使った「なめろう」のようなもの。漁師が船上で、釣ったサンマをショウガ、味噌、ネギなどで調理したのが始まりと言われ、小名浜では家庭料理として親しまれてきました。

サンマは蒲鉾でタブーとされてきた材料。製造するには手間暇がかかり、サンマを普通に購入して食べたほうが、蒲鉾にするより安いからです。
小名浜はサンマの水揚げで有名な場所。貴千があえてそのタブーに挑戦したのは「いわきの良さ」「小名浜の味」を伝えたい、という想いから。
完成した「さんまのぽーぽー焼風蒲鉾」は、実際のサンマほどのサイズで、サンマの形に成形されています。地元の人にとっては馴染みの味。ぽーぽー焼きを知らない人にとっては、食材の味がしっかり味わえる新しい感覚の蒲鉾です。パッケージは貴千社員がデザイン。ぽーぽー焼きの旨さを知る、小名浜で生まれ育った人だからこそ描けるサンマの絵が、食欲をそそります。

「新しいことにチャレンジするのは楽しいことです」そう話す小松専務の言葉には、蒲鉾を作る誇りと、地元を愛するあたたかさが感じられました。
平成24年1月取材